昨晩の衝撃が冷めやらぬまま、朝、白神山へ。本当は6時に起床の予定のはずが、旅の疲れもあり、ちょっと寝坊・・・。昨日は、なんて濃い一日だったんだろう。3日分くらいに感じられた。
旅程では、今日は白神山地に行って、ご来光を拝むことになっている。白神は、93年に世界自然遺産に登録されている。
ぶん太さんは白神山地のボランティアガイドもなさっている。ガイドの先輩という方もいて、山のことはその方に教わったのだそうだ。山を走る車の中、妖精の話がふと出る。あるとき、ぶん太さんが他の方をこうして白神に案内していた時、その方は「停まって下さい!!」と突然叫んだそうだ。「いま、何か小さな人をひいてしまいませんでしたか」と。ところが、ふりかえっても、何もいない・・・。きっと、その方には妖精が見えたのだろうか。ちなみに、ぶん太さんには見えたことはない、とのこと。このお話を弘前でのコンサートでお客様にお話したら、私も見た!という人が何人かいてびっくり。
見晴らしの良い山頂に車を停める。ここにはトイレがあるのだけど、太陽光発電&浄化槽つきで、完全に自然にとけこむように配慮されている。すごい!電気も水道も引いていないので、手洗い水は「し尿」を再生した水だけど、完全にきれいになっていた。
マザーツリーを見に行く。マザーツリーとは、ブナの巨木のことで、白神のシンボルなのだそうだ。車から少し山を歩くと、その木が堂々とした姿を現した。
この木のエピソードをぶん太さんから聞いた。ブナは橅と書く。つまり「木にあらず」という意味があるのだそうだ。ブナは枝を四方に広げて多くの葉を茂らせる。それが落葉し腐葉土を作るために、ブナの根元には多量の水分が蓄えられ、天然のダムとも言われる。また、ブナ本体にも多くの水分を含んでいるために、柔らかく曲がりやすく、家具作りには適していない。そのため、リンゴを出荷するための使い捨ての木箱を作る材料として、また、建築用の使い捨てのコンパネとして、高度経済成長期に大量に伐採されたそうだ。
日本中で、ブナの代わりに人間が利用しやすく、価値の高いヒノキやスギが植えられた。これらの木は、垂直に伸び、枝を横に伸ばさないので、密植できるのもその理由となったそうだ。大量に植えられたスギやヒノキは、やがて、多くの花粉症患者を生み出すことにつながり、また山の水分を不足させ、山林の荒廃にもつながった。
このマザーツリー周辺の原生林も、企業が伐採用に買い取ったものだが、企業がそれを手放したために、運よく放置されてしまったのだそうだ。
そのため、マザーツリーは生き残ることができた。
樹齢400年にもなる大木に触れ、400年前の日本へ思いを馳せる・・・ブナの寿命は平均300年程度だが、長生きのものは700年にもなるそうで、これから何百年先も、生き続けてくれるよう、祈る。
マザーツリーからちょっと歩くと、見晴らしの良い広場に出た。

ここから眺める景色は、自然そのもの。きっと数百年、この景色は変わっていなかったことでしょう。ぶん太さんが笛を取りだし、1曲演奏する・・・。時々、ここへきては心を落ち着かせ、笛の音色を奉納するのだそう。
僕にもすすめられたけれど、何も演奏できなかった。この神々しい自然に、人間が何かをすることが、あまりに無意味なことのようにも思った。自然の素晴らしさには、どんなオーケストラも、名人もかなわない。そんな気持ちになってしまったのだ。
短い滞在だったけれど、見ることができて本当によかった。
つづく